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ねこの胆管炎・胆管肝炎について

獣医師が監修しました
工藤 綾乃 先生

獣医師

胆管炎・胆管肝炎とは

肝臓では、脂肪の消化吸収に重要な役割を果たす黄褐色の胆汁(たんじゅう)という液体が作られています。胆汁は胆嚢(たんのう)に溜められた後、肝臓と十二指腸(胃と小腸の間の消化管)を繋ぐ「胆管」という管を通って排出されます。
この胆管に炎症がある状態を胆管炎、また胆管周囲の肝臓の組織にも炎症がある状態を胆管肝炎といいます。

 

原因

胆管炎・胆管肝炎はその原因によっていくつか種類がありますが、ねこで比較的見られるものとしては、細菌感染が関与しているもの、自己免疫疾患の関連が疑われるもの、そして寄生虫感染によるものの3つです。

好中球性胆管炎・胆管肝炎(化膿性ともいう)

胆管は肝臓と十二指腸を繋いでいます。腸管の中の細菌が胆管をさかのぼって感染が起こることが原因となる病態を、好中球性胆管炎・胆管肝炎と呼びます。好中球とは、感染した細菌をやっつける働きをする白血球の一種です。症状が重くなることが多く、急に全身状態が悪化する場合があります。また、膵臓や腸管に炎症が併発することもあります。

リンパ球性胆管炎・胆管肝炎(非化膿性ともいう)

免疫システムが過剰に反応することが原因となると考えられています。リンパ球は免疫を担う白血球の一種です。好中球性と比較して、一般的に慢性的に経過し、はじめのうちは無症状か軽症のことも多いです。

肝吸虫胆管炎・胆管肝炎

肝蛭(かんてつ)などの寄生虫が原因となって胆管炎や胆管肝炎が起こることもあります。肝蛭は、牛などの糞に含まれた肝蛭の卵が水田や小川などにいる貝の中で成長して増え、その後貝から水中に出てきます。水中に出た肝蛭は水田の稲や水辺の植物(クレソンやセリなど)にくっつき、この寄生虫がついた植物を食べることで、人やねこを含むすべての哺乳類と鳥類が肝蛭に感染する可能性があります。牛や鹿の肝臓の生食(レバ刺し)による感染も報告されています。

まれな原因ではありますが、感染した肝蛭が胆管や肝臓に寄生することによって、胆管炎や肝炎が起こることがあります。

 

症状

胆管炎・胆管肝炎では、以下のような症状がみられることがあります。

黄疸(おうだん:皮膚や粘膜、白目が黄色っぽくなる)

血液中のビリルビンという物質は、正常時には肝臓で胆汁のもととなって十二指腸に出され、その後便や尿とともに排泄されます。尿の黄色や便の茶色の色の元となっているのがこのビリルビンです。肝臓から体外に出される経路に異常があり(胆管が閉塞しているなど)、ビリルビンが体外に排出されない状態が続くと、体液中のビリルビン濃度が高くなります。これによりビリルビンの色素が体の表面からも見えるようになった状態が黄疸です。黄疸は胆管炎の典型的な症状ですが、症状の程度によっては黄疸が見られない場合もあります。

食欲不振

嘔吐

下痢

腹部の痛み など

 

診断のために行う検査

胆管炎・胆管肝炎を診断するためには、どのような検査が行われるのでしょうか。

血液検査

· 肝酵素値の測定

血液検査をするときに、肝酵素を測定します。肝臓や胆管に問題がある場合にこれらの数値が上昇します。

· 血中ビリルビン濃度の測定

【症状】の黄疸の箇所で記載があるように、肝臓から胆管を通って排泄されるまでのいずれかの経路に異常があってビリルビンが体外に排出されないと、体内のビリルビン濃度が高くなります。

· その他血液検査

原因の違いによって異なる種類の血球の割合が増えることがあります。

画像検査

X線検査やエコー検査により、肝臓が大きくなっていないか、胆嚢や胆管に異常はないか、腹水がたまっていないかなどを調べることができます。

細菌培養

胆汁を採取し、胆汁の中に細菌が含まれていないかを検査することもあります。

肝生検

肝臓の組織を少し採って行う検査です。肝臓の中にどういった細胞が多いか、細菌が感染していないか、などを調べることができます。検査には全身麻酔が必要です。

また、肝蛭の感染が疑われる場合は、血中の肝蛭に対する抗体の有無を調べたり、糞便や胆汁の中に肝蛭の卵が含まれていないかを調べたりします。

 

治療

化膿性と非化膿性で治療法は異なります。

好中球性胆管炎・胆管肝炎

細菌感染の場合は抗生物質を投与します。また、症状が重く、下痢や嘔吐によって脱水状態になってしまっている場合は静脈点滴を行う場合もあります。
もし胆管が閉塞してしまっている場合は、手術が必要になることもあります。

リンパ球性胆管炎・胆管肝炎

過剰な免疫反応を抑えたり、炎症を抑えたりするためにステロイドを投与します。

肝吸虫性胆管炎・胆管肝炎

駆虫薬を投薬し、寄生虫を駆除します。

胆管炎や胆管肝炎は、治療が遅れると命に関わることもある危険な病態です。少しでも気になる症状がある場合には、早めに動物病院を受診しましょう。

 

参考文献:

1. Feline Cholangitis. L. Boland and J. Beatty. Vet Clin Small Anim. 2016.

2. 内閣府 食品安全委員会、訪問日:2022/03/01

監修者

工藤 綾乃 先生 (獣医師)

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。