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ねこの糖尿病

獣医師が執筆しました
原田 優眞 先生

獣医師

ねこの糖尿病とは

体内の血糖値は食後に増加しますが、このとき血糖値が上がりすぎないように膵臓から分泌されるホルモンがインスリンです。インスリンが出なくなったり、効きにくくなったりすることで血糖値が下がらず、高血糖状態が続く病気を糖尿病と呼びます。

糖尿病は人の生活習慣病の一つと言われているため、馴染みのある方が多いと思われますが、ねこも糖尿病になります。人では、インスリンを出す細胞が壊されることでインスリンが出なくなる「Ⅰ型糖尿病」、インスリンの量が十分でなかったり効きにくかったりする「Ⅱ型糖尿病」、妊娠期にインスリンが効きにくくなる「妊娠糖尿病」、その他の糖尿病に分類されます。ねこでは、Ⅱ型糖尿病に当たるインスリンが効きにくくなるタイプの糖尿病が多いと言われています [1]。

インスリン分泌の減少や、効きにくさに影響する因子(膵炎や肥満、ステロイドなどの薬物の影響など)を持つ中高齢のねこが罹りやすい病気です [2, 3]。血糖値のコントロールが出来れば良い体調を保てる病気ですが、コントロールのためには基本的に生涯のインスリン注射が必要になります。

症状

糖尿病にかかると、どのような症状がでるのでしょうか。症状として典型的なものを見ていきましょう。

多飲多尿

たくさん水を飲み、おしっこの量が増える症状です。血糖値が上がり血液の浸透圧が上がることで生じます。

脱水

体内の水分が尿として多く排泄されてしまうため、脱水が生じます。・体重減少インスリンの働きが低下することで、食餌から取ったブドウ糖をエネルギーとして使用しづらくなり、体重減少が生じます。

多食

ブドウ糖をうまく体内に取り込めないため、脳から食餌を取るように刺激が出るようになり、多食傾向が生じます。

尿のにおいの変化

糖が尿に混じって排泄されるため、甘酸っぱいようなにおいに変化することがあります。また、膀胱炎も起こしやすいため、きついにおいの尿が出ることもあります。

「最近水をよく飲んでいるな」「よくおしっこに行くな」と、気になる症状が出てくるようなら早めに検査を受けるようにしましょう。また稀な症状として、「糖尿病性神経障害」という後ろ足の麻痺が起こることもあります。

 

検査

糖尿病を疑う時には、自宅の様子に関する問診が重要となります。飲水量や排尿量、食事量、体重の変化などが分かるといいですね。病院で行う検査項目には、次のものが考えられます。

血液検査

血糖値の測定を行い高血糖の状態かを判断します。ねこではストレスで一時的な高血糖になることもあるため、糖尿病による持続的な高血糖状態かの判断には注意が必要です。一時的な高血糖になりやすいねこなどでは、過去2~3週間の血糖値を反映すると言われるフルクトサミンや糖化アルブミンという項目を参考にすることもあります。また、その他の数値に異常が出ていないかも、原因や重症度を知る手がかりになります。

尿検査

尿検査では、尿糖やケトンなどを調べることができます。もし新しいおしっこが出ているようならば、尿を持参すると検査がスムーズに進むかもしれません。

〈尿のとり方〉

猫砂をトレーに入れたタイプのトイレの場合には、ねこがおしっこの姿勢になったら薄いトレーのようなものをお尻の下に差しこみ尿を回収しましょう。トレーは必ずきれいに洗い、水気をよく切ってから使用してください。

システムトイレの場合は、下段にペットシーツの代わりに食品用ラップをひいておくことで回収ができます。

治療

インスリン投与

血糖値を安定させるために、インスリンの投与が治療の中心となります。しかし、インスリンが効きすぎると逆に低血糖状態になり、痙攣などの神経症状が出ることもあります。そのため、数時間おきの血糖値の測定をしながら、その子に合うインスリンの種類・量を決定する必要があります。

また、治療開始後は基本的に生涯インスリンの投与が必要です。体調の変化があったときには、自宅での判断でインスリンの投与量を変えることは絶対にせず、獣医師と相談の上変更を行いましょう。

点滴治療

糖尿病により脱水が起きているねこには、点滴による水分補給が必要です。脱水が起きていると、インスリン注射の効きが悪くなってしまったり、ミネラルのバランスが乱れてしまうことがあります。

食事療法

血糖値が安定しやすいように、食事の内容を変更することも糖尿病のコントロールに重要です。ねこが無理なく食べられるようであれば、糖尿病用の療法食への変更も検討してみましょう。

 

予後は?

糖尿病のコントロールが取れているねこでは、生存期間の中央値が13~29カ月と言われています [4]。上手く治療のコントロールが出来れば長く病気と付き合っていくことも可能なため、こまめに状態を把握することが大事です。

 

糖尿病性ケトアシドーシス

最後に、糖尿病のコントロールができていないときに生じる恐ろしい合併症の1つ、「糖尿病性ケトアシドーシス」という病態についてご説明します。

糖尿病によって体内のインスリンが不足すると、高血糖により腎臓から水分などが失われ脱水が生じます。また、ブドウ糖の細胞内への取り込みが減少することでエネルギーが不足し、代わりに脂肪酸をエネルギーとして利用するようになります。この過程で、ケトン体という成分が産生されることで生じるのが、ケトアシドーシスという状態です。糖尿病のコントロールが上手くいってない場合や、ご飯を食べられていない場合に陥ることがあります。

症状としては、元気食欲の急な消失、嘔吐・下痢、呼吸促迫、意識の低下~消失などを示します。糖尿病性ケトアシドーシスは命に関わる病態のため、かかりつけの病院が開いていない場合も夜間病院や救急病院などに早めに行くことをオススメします。

 

参考文献:
1. Pathogenesis of feline diabetes. J S Rand. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2013.
2. Diabetes mellitus and pancreatitis--cause or effect? L J Davison. J Small Anim Pract. 2015.
3. Metabolic Effects of Obesity and Its Interaction with Endocrine Diseases. M Clark and M Hoening. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2016.
4.ISFM consensus guidelines on the practical management of diabetes mellitus in cats. A H Sparkes et al. J Feline Med Surg. 2015.

執筆者

原田 優眞 先生(獣医師)

広島出身。北海道大学を卒業後、関東の動物病院で犬・猫・エキゾチック動物などの診療に従事。犬だけではなく、いろんな動物の医療が充実するといいなと思ってます。興味のある分野はエキゾチック動物、野生動物、血液など。