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猫ウイルス性鼻気管炎について

獣医師が執筆しました
原田 優眞 先生

獣医師

猫ウイルス性鼻気管炎とは

猫ウイルス性鼻気管炎は、ウイルスによってねこの鼻や気管などの上部気道に異常をもたらす病気です。原因ウイルスとしては、猫カリシウイルスや猫ヘルペスウイルスⅠ型が認められています [1]。

ウイルスは感染したねこの排泄物や分泌物に存在し、それが他のねこの口や鼻、眼の結膜などから体内へ入ることで感染します。そのため、多数のねこと接触する環境下で感染リスクが高くなります。一度感染したねこでは回復した後もウイルスが潜伏感染していることが多く、ストレスなどがきっかけとなり再発したり、ウイルスの排出が起こったりすることが知られています。

 

症状

・くしゃみ、鼻汁、発熱
一般的な人の風邪と似た症状が生じます。ねばねばとした鼻汁が多く出ることで、鼻が詰まってしまい苦しそうな呼吸になることもあります。

・結膜炎、眼脂
眼の周りの症状も良く見られる症状としてあり、結膜という眼の周り(黒目の外側~まぶたの裏)の組織が腫れたりします。重度になると、結膜同士がくっついてしまい、眼が覆われてしまうこともあります。

 

・口腔内、鼻の潰瘍
口や鼻の中に潰瘍病変を作ることもあります。そのため、口の中もチェックしてあげることが大切です。

 人の風邪と似た症状であれば分かりやすいですが、口の中や眼の症状を見逃さないよう、たまに確認してあげることが大切です。

 

治療

・抗ウイルス薬
症状が重い場合には、飲み薬タイプの抗ウイルス薬の使用を検討します。ウイルスの活動を抑えることで、症状を軽くできる可能性があります。原因ウイルスの検出には、口の中や鼻、眼の分泌液などを用いたPCR検査などが必要となります。

・抗生剤
ウイルス感染に伴って、クラミジアやボルデテラなどの細菌が二次的に感染し、悪化の原因になっていることがしばしばあります。その場合には細菌の培養検査などで、どんな細菌がいるのか?それに対してどういった抗生物質が効くのかを調べながら、適切な抗生物質を使用します。抗生剤には飲み薬タイプのものや、点眼・点鼻薬があります。

・支持療法
症状の重いねこでは、食事がとれない状態のこともあります。その場合は食欲増進剤の使用やチューブを用いて食事を与える治療なども必要になります。また、脱水がある場合には点滴での水分補給も必要です。

・免疫力の維持
一度回復したねこが繁殖、転居などのストレスやステロイドの投与によって再発したり、ウイルスの再排出が始まったりすることもあります。そのため、ねこへのストレスを減らしたり、免疫力を保てるように食事内容に気をつけてあげることも大切です [2]。

 若いねこや衰弱したねこでは致死率が高い感染症ですが、多くのねこは10~20日で回復します [3]。また急性期の症状が改善した後も慢性的な症状が残るねこもいます。

 

予防

 多頭飼育や野良猫との接触など、多くのねこと接する環境で感染リスクが高くなりますので、できるだけ多数のねことの接触は避けることが大切です。野良猫との接触を避けるためにも室内飼育が望ましいです。

 ワクチン接種もウイルス症状の発症予防には有効です。ペットショップなどでは一回目のワクチンは接種済みの子が多いとは思われますが、初年度は決められた期間に複数回のワクチン接種が必要となります。また、母親から譲り受けた抗体が減っている4~6週齢のねこが最も感染しやすいと言われていますので、適切な時期にワクチンを打ってあげて重症化させないことが大切です [4]。

 またウイルスに感染してしまったねこがいる場合には、生活環境を分けたり定期的な消毒(次亜塩素酸など)を行なうことも大事です。気になる症状がみられた場合には、早めに動物病院を受診しましょう。

  

参考文献:

1. Recent epidemiological status of feline upper respiratory infections in Japan. M Mochizuki et al. J Vet Med Sci. 2000.

2. Feline herpesvirus infection. ABCD guidelines on prevention and management. E Thirty et al. J Feline Med Surg. 2009.

3. 猫の治療ガイド2020 私はこうしている. 辻本元ら. EDUWARD Press. p203 - 205.

4. A review of feline viral rhinotracheitis (feline herpesvirus I infection). R C Povey. Comp Immunol Microbiol Infect Dis. 1979.

 

執筆者

原田 優眞 先生(獣医師)

広島出身。北海道大学を卒業後、関東の動物病院で犬・猫・エキゾチック動物などの診療に従事。犬だけではなく、いろんな動物の医療が充実するといいなと思ってます。興味のある分野はエキゾチック動物、野生動物、血液など