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爪切りやブラッシングなどのお手入れに慣れるためには

獣医師が執筆しました
山田 良子 先生

獣医師・獣医学博士

特任研究員(東京大学)

はじめに

ねこの健康管理のために、爪切りやブラッシングなどの日々のお手入れは大切です。爪切りやブラシといった道具を使った身体のケアがスムーズにできるよう、日頃から少しずつ練習を進めていくことをお勧めします。本記事では、ねこのお手入れを行う上での考え方や、お手入れのコツをご紹介します。

 

お手入れをする上での考え方

ねこにお手入れを受け入れてもらうには、ねこ自身にお手入れされることを楽しいと感じてもらう必要があります。そもそも、爪切りやブラシなどの道具を使ってお手入れされることはねこにとって自然なことではありません。そのため、無理にお手入れしようとすると道具や作業者に対して恐怖や不快感を示すようになってしまいます。「お手入れという嫌なことを我慢させながら行う」のではなく、「お手入れはごぼうびをもらえるという“楽しいこと”が起きるイベントである」とねこに理解してもらうようにします。そのためには、以下のように段階的な練習を行います。

お手入れのコツと練習方法

1. お手入れの前に「身体を触られること」に十分慣らす

お手入れを行う前の段階として、触られること自体に慣れている必要があります。家に迎えた直後など、まだねこが家族に慣れていない段階でお手入れを行うことは恐怖やストレスを与える原因になりますので望ましくありません。 お手入れに向けた最初のステップとして、おやつを使いながらねこに触る習慣をつくります。ねこが一番好きなおやつを見せながら呼び、おやつを膝の上に置いたり少しずつ手から与えたりして、ねこが自分の傍で過ごすようにします。リラックスしておやつを食べているようであれば、おやつを食べさせながら頭や肩などの嫌がりにくい部位を軽く撫でます。徐々に撫でる範囲を広げていき、最終的には足先を軽く握る(爪切りを想定して爪をそっと押し出す)ところまで進めます。毎日少しずつ練習を進めることで、「ごほうびをもらいながら身体を触られること」に慣らしていきます。

2. 道具に慣らす

身体を触られることに慣れてきたら、次はお手入れに使う道具に慣らしていきます。道具をねこの視界に入る場所に置き、その横におやつを置きます。ねこが自分から近寄ってくるまで待ち、来たらおやつを与えます。数日試して道具を警戒する様子が見られなくなったら、道具とおやつを持った状態でねこの近くに座り、ねこが来たらおやつを与えます。数日試してねこが道具を気にしていないようであれば、おやつを食べている時に少しだけ道具を動かしてみます。徐々に道具の動かし方を大きくしたり、ねこの身体にそっと道具を当てたりしてみます。

3. 実際のお手入れ

<ブラッシング>

おやつを食べさせながら、首の後ろや背中などの嫌がりにくい部位を数回優しくブラッシングします。一度に身体全体のブラッシングをするのではなく1回に1部位だけをブラッシングするようにし、尻尾をパタパタさせる・耳を後ろに向ける・ソワソワしながらニャーニャー鳴くといった“もう嫌ですよサイン”が出る前に解放してあげてください。 ブラッシングに使用する主なブラシの種類として、短毛種ではラバーブラシやコーム、長毛種ではコームやピンブラシ、スリッカーブラシが挙げられます。ピンブラシやスリッカーブラシは毛を引っ張りすぎたり先が皮膚に当たるとねこが痛い思いをする可能性がありますので、力を入れすぎないよう特に注意してください。まずはラバーブラシやコームを使って練習すると良いかもしれません。

<爪切り>

おやつを食べながら足先を触られても平気になり、さらに爪切りの近くでおやつを食べられるようになったら、実際の爪切りに近い状況での練習に進みます。まずは爪切りを足先に軽く当てるだけに留め、ねこが落ち着いていたらすぐにおやつを与えます。数日試してねこが慣れてきたら、次は爪を切る振り(爪を押し出してその爪に爪切りを当てる)をします。この段階ではまだ切らず、爪を切る振りをしてもねこが落ち着いていたらすぐにおやつを与えてください。これも数日試し、ねこが全く平気そうであれば、おやつを与えながら実際に爪を1本切ります。1回の爪切りで全ての爪を切るのではなく、何回かに分けて全ての爪を切るようにします。爪切りの時もブラッシングの時と同様、ねこが“もう嫌ですよサイン”を出す前に解放してください。おやつをあげる係と爪を切る係の二人で分担すると行いやすくなりますよ。

終わりに

目指すところは「おやつなしでお手入れができること」ではなく、「お手入れをねこが楽しいと思うこと」ですので、ぜひごほうびとなるおやつを使いながら練習を進めていってください。なお、ねこは長時間集中力を維持できる動物ではありませんので、1回の練習は5〜10分程度に留めてくださいね。おやつを使ったお手入れの練習はねこと飼い主さんの楽しいコミュニケーションにもなりますので、毎日少しずつ続けていただければと思います。

 

参考文献:

1. Trimming your cat’s claws, International Cat Care, 2019. (アクセス日:2021年2月14日)

2. イヌとネコの問題行動の予防と対応, 水越美奈監修, 第一版, 緑書房. 96-105. 2018.

執筆者

山田 良子 先生 (獣医師・獣医学博士)

獣医師, 博士(獣医学)。東京大学農学部獣医学専修及び同大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程卒業。動物と人間が共に暮らしやすい社会づくりに貢献することを目指し、東京大学附属動物医療センターにて行動診療に従事(特任研究員)。専門は動物行動学、臨床行動学。愛猫は11歳の白猫「ユキ」。