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肝リピドーシス

獣医師が執筆しました
原田 優眞 先生

獣医師

肝リピドーシスとは

肝リピドーシスとは肝臓の細胞に脂肪が溜まってしまう、いわゆる脂肪肝の状態に伴い肝臓の機能障害を起こす病気です。食欲不振や栄養不足が数日間続くと、体は脂肪を利用してエネルギーを作るようになります。そのエネルギーを作る代謝の過程で、肝臓に異常に脂肪が溜まってしまい肝リピドーシスを発症します

肥満のねこでは血糖値を調節するホルモンであるインスリンが効きにくかったり、肝臓に中性脂肪が蓄積していたり、肝臓への脂肪貯蔵のバランスが乱れていたりすることで、肝リピドーシスを発症しやすいため、とくに注意が必要です [1,2]。

 

原因

・食欲不振

体内のエネルギー欠乏が根本的な原因となるため、食欲不振に続発して肝リピドーシスが生じることが多くあります。食欲不振がある時には放置せずに原因を探して治療をすることや、食欲不振にならないように、ふだんから質のよく美味しいご飯をあげることが大切です。

・膵炎、胆管炎、腫瘍、糖尿病など

食欲不振を起こす病気に伴って肝リピドーシスを起こす可能性があるため、病気の治療とともに、肝リピドーシスにならないよう食欲不振に対する対処も必要となります。特に膵炎や胆管炎は、嘔吐を伴う食欲低下が急性に生じるため注意が必要です。

 

症状

・元気食欲の低下、体重減少

根本的に食欲不振に引き続いて肝リピドーシスが発症するため、元気食欲の低下やそれに伴う体重減少などが認められます。また、肝リピドーシスに伴って食欲不振が更に続くという悪循環が生じます。

・黄疸

肝臓が障害を受けることでビリルビンという老廃物が代謝しづらくなり、体に溜まってしまいます。重度にビリルビンが溜まることで、白目の部分や皮膚などが黄色く変色する黄疸という症状が出ます。また、尿の色が濃いオレンジ色に変わるというのも黄疸の特徴的な症状です。

・嘔吐、流涎

ビリルビンが体に溜まることで気持ち悪さが生じます。よだれが出たり、嘔吐したりという症状が生じます。

・脱水

水や食べ物を取れず口からの水分摂取量が減少するとともに、嘔吐などによって水分が出ていくため、脱水が生じます。

・重度になると痙攣、意識障害など

肝臓の機能が落ちることで、本来肝臓で代謝されるはずのアンモニアが溜まっていきます。血中のアンモニアが高濃度になることで痙攣や意識障害などの神経症状を起こすこともあります。

 

診断のために行う検査

・血液検査

肝数値の上昇や肝臓の機能低下などを確認することで、肝臓自体の障害を確認します。

・エコー検査

肝臓自体に脂肪の蓄積を疑う変化がないか、肝リピドーシス以外の肝臓の病変がないか、また肝臓意外に食欲不振を起こす根本的な原因がないかをエコー画像で確認します。

・病理組織学的検査

上記検査で肝リピドーシスを疑う場合に、確定診断をつけるには針生検ないしは試験開腹などで肝臓を一部採取し、病理組織を顕微鏡で見る必要があります。ただ、肝リピドーシスに伴い、止血機能の異常や麻酔をかけられないほど全身状態が悪い場合には確定診断をつけずに治療に進む場合もあります。

 

治療

・基礎疾患の治療

膵炎や胆管炎、腫瘍、糖尿病などが基礎疾患としてあって食欲不振が起きている場合には、その根本的な原因に対する治療が必要となります。

・強制給餌(経鼻食道カテーテルや、経食道カテーテル)

自分で食餌を取れないことが原因で肝リピドーシスになってしまうため、さらなる悪化を防ぐために強制的にご飯を食べさせてあげることが必要です。しかし、食欲がない状態のねこに口元に無理やりご飯を入れても、そのストレスでさらにご飯を食べなくなってしまいます。

鼻や食道に細いカテーテルを設置し、そこから流動食を入れてあげることで給餌のストレスを減らすことができます。

・点滴

脱水やミネラルバランスの異常を整えるために点滴を行います。

・吐き気止め

嘔吐などのあるねこでは気持ち悪さから食欲不振が進行してしまうため、吐き気止めの薬を用いて吐き気のコントロールをしてあげることも大切です。

実際の治療は、原因や重症度によって変わりますが、約半数の症例が5日ほど入院しているというデータもあるので [2]、しばらくは入院治療が必要となります。また退院後も基礎疾患のコントロールを含めた小まめな経過観察が必要となります。

 

注意点

肥満傾向にあるねこは肝リピドーシスを発症しやすいため、日々の体重管理をすることが肝リピドーシスの予防につながります。しかし、過度な食事制限は逆に肝リピドーシスを招いてしまいます。維持エネルギー必要量(適度に運動するねこが一日に必要とするエネルギー)の60%に食事制限をしたねこで、肝リピドーシスを発症してしまったとの報告もあり [3]、急なダイエットには注意が必要です。ねこがどの程度の肥満状態にあるかや、どのようにダイエットをすれば良いか心配な方は獣医師に一度相談してみるとよいですね。

肝リピドーシスは、食欲不振を起こす原因に対処ができ、早期に適切な治療を行えれば80~85%は回復するとの報告もありますが、重度の場合だと亡くなる可能性もある恐ろしい病気です [1]。食欲不振の続くねこでは早めに病院で診察を受けることをおすすめします。 

 

参考文献:

1. Feline Hepatic Lipidosis. C Valtolina and R P Favier. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2017.

2. Prognostic markers in feline hepatic lipidosis: a retrospective study of 71 cats. S Kuzi et al. Vet Rec. 2017.

3. Management of obesity in cats. K M Hoelmkjaer and C R Bjornvad. Vet Med (Auckl). 2014. 

 

執筆者

原田 優眞 先生(獣医師)

広島出身。北海道大学を卒業後、関東の動物病院で犬・猫・エキゾチック動物などの診療に従事。犬だけではなく、いろんな動物の医療が充実するといいなと思ってます。興味のある分野はエキゾチック動物、野生動物、血液など