便の観察項目

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工藤 綾乃 先生 獣医師
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いつもと違う便が出たら

ねこの便がいつもと違う、排便時の様子が違う時は体調不良のあらわれかもしれません。

便の状態は、硬さや色の様子から次のように分けられます。

 

便の特徴とねこの症状

異常が隠れている便の特徴や症状について詳しく見てみましょう。

硬い、便秘の便が出るとき

排便姿勢をとっているのに便が出ていない、いつもよりも時間をかけて踏ん張っている、または排便時に苦しそうに鳴くといった場合には便秘の可能性があります。また、便が出きらず、頻繁にトイレに行くようになることもあります。

便秘が続いたり、何度も繰り返すことで胃腸の動きが悪くなると、食欲がなくなったり、嘔吐してしまうことがあります。

血便

下痢の周りに赤い血が付着していたり、通常の硬い便の周りに血が付着している場合があります。また、下痢の周りにゼリー状の粘液と血液が付着している粘血便もあります。思わず驚いてしまいがちですが、落ち着いて様子を見て、長く続いたり悪化するようであれば動物病院に連れて行きましょう。

黒色便(メレナ)

イカ墨のような真っ黒から赤黒い下痢のことをメレナといいます。メレナは、胃や小腸などの消化管の比較的始まりの方で大量に出血している可能性を示す症状です。大量に出血した血液が胃や腸で消化されることにより、便の色が真っ黒から赤黒くなります。命に関わる重篤な疾患が背景にあることが多いので、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。

軟便、下痢

小腸が原因で起きる下痢の場合は、下痢の回数はそれほど多くなく(1日に2~3回程度)、一回にまとめてたくさんの量が出る傾向があります。一方、大腸が原因の下痢の場合は、少量の下痢を何度もしたり(1日に3~5回程度)、排便姿勢をとってしぶるといった様子が多くみられます。

 

便に異常が出る原因

では、それぞれの便でどのような原因が考えられるのでしょうか。

硬い便秘の便

・代謝、内分泌の異常

・物理的な障害

・生活環境

・炎症

・神経の異常

・薬剤

    血便

    ・食事アレルギー

    ・炎症性腸疾患

    ・寄生虫感染(コクシジウム、ジアルジアなど)

    ・ウイルス感染(猫白血病ウイルス、猫免疫不全ウイルスなど)

    ・腫瘍性疾患

    ・直腸付近の外傷

      黒色便

      ・口や鼻で大量出血があり、飲み込んでいる(重度の炎症、腫瘍など)

      ・胃や小腸で大量出血が起きている(重度の炎症、腫瘍、異物など)

        軟便、下痢

        軟便や下痢では、数日以内に始まった急性の下痢なのか、それとも長く続いている慢性の下痢なのかを分類して考えます。

        急性の下痢

        ・食餌の影響

        ・寄生虫感染

        ・細菌・ウイルスの感染

        ・ストレス

          慢性の下痢

          ・慢性腸炎

          ・内分泌疾患

          ・消化管腫瘍

          ・膵外分泌不全

             

            便以外に注意すべきポイント

            便の異常を見つけたら、その他の体調の変化がないか注意することが重要です。

            次のような点を確認してみましょう。

            元気や食欲に変化はないか

            体調が落ちるほどの変化があれば、便の異常が関係している可能性があります。

             

            水はしっかり飲めているか

            特に下痢をしてしまっているねこは、脱水状態に陥る危険があります。

            嘔吐などの症状はないか

            口から肛門は繋がっているため、嘔吐がある場合はより重症度が高い可能性があります。

            体重の変化はないか

            症状が激しかったり、長期間にわたる場合は体重の変化がみられます。

             

            便の異常は、一時的な場合もあれば、大きな病気が隠れている場合もある非常に幅の広いサインです。日々の便を観察し、気になる症状や疑問がある場合は迷わず動物病院の受診を検討しましょう。

             

            この記事を監修した人
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            工藤 綾乃 先生 獣医師

            札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。

            発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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