尿の観察項目

獣医師が監修しました
工藤 綾乃 先生

獣医師

いつもと違う尿が出たら

ねこの尿がいつもと違う、排尿時の様子が違う時は体調不良のあらわれかもしれません。

特に尿の色やにおいは毎日の変化から気付きやすい異常です。

色の異常:血尿

尿に血液が混ざるとピンク色や赤橙色に変化し、混ざる量が多い場合には鮮やかな赤色や茶褐色になります。これが血尿です。

ねこの陰部や周囲の毛に血液汚れが付着していることもあります。血尿を疑う際は必ず、ねこの体もチェックしましょう。血尿と同時に頻尿の症状があらわれることも多くありますので、トイレに行く頻度も観察しましょう。

においの異常:異臭

膀胱の中で菌が増えてしまっている場合はツンとした臭いがしたり、糖尿病のような尿の性状が変わる病気の場合は甘酸っぱいような臭いが出てくることがあります。また、まれな病態ではありますが、尿と一緒に膿が出てくる病気を患っている場合は生臭いような臭いがすることがあります。

 

尿以外に注意するべきポイント

ほとんどの場合は尿の色やにおいだけでなく、トイレ時の行動にも異常が出ることが多いです。

代表的な行動の異常として、

・排尿時に痛がるように鳴く

・頻繁にトイレに入る

・排尿姿勢をとっているのに、尿がほとんど出ていない

などの異常が挙げられます。

尿の色や臭いに異常がない場合も、トイレ時の行動に異常がみられる場合は膀胱炎や尿道閉塞などの病気を患っている可能性もあります。

尿に異常が出る原因

血尿

・膀胱炎

ー 結石性膀胱炎:尿中のミネラルが溶けきれずに結晶化し結石になることで、膀胱粘膜を傷つけておきる膀胱炎。

ー 細菌性膀胱炎:細菌が尿道を通って膀胱に侵入し、膀胱内で炎症を起こしてしまう病態。

ー 特発性膀胱炎:膀胱に原因が特定できない炎症がある状態で、ストレスや飼育環境が関与。

 

・尿道閉塞

尿道に結石などが詰まることで、尿が出せなくなってしまう病態です。膀胱炎によって生じた沈殿物が尿道に詰まってしまうこともあります。命に関わる病態のため、救急対応が必要です。

 

・腫瘍

腎臓や膀胱に腫瘍が生じると、腫瘍からの出血により血尿が出ることがあります。

他にも、雄ではペニスの傷や雌では子宮・膣の病気で尿に血が混じることもあります。ねこが屋外で生活する場合は、交通事故や転落などによる膀胱の外傷によって血尿になることもあります。

異臭

・細菌性膀胱炎

膀胱に細菌が入り込むことで炎症を起こす病気です。しかし、全ての細菌性膀胱炎の症例で尿のにおいがきつくなるわけではないので、注意が必要です。

・糖尿病

尿に糖が出てきてしまう病気です。お水を飲む量や尿量が増える、「多飲多尿」という症状も起きやすいので注意が必要です。

・腎臓や膀胱の重度炎症

ドロドロとした乳白色のものが尿と一緒に出ている場合には、すぐに動物病院に相談しましょう。

・子宮蓄膿症

未避妊の雌ねこでみられる、子宮に膿が溜まってしまう疾患です。ドロドロとした乳白色のものが尿と一緒に出ている場合には、すぐに動物病院に相談しましょう。

 

尿の異常は、ひとつではなく色、臭い、排尿時の様子などの異常が複合して起こることが多いです。

日々のトイレをよく観察し、気になる症状や疑問がある場合は迷わず動物病院の受診を検討しましょう。

 

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監修者

工藤 綾乃 先生 (獣医師)

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。