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黒色便・メレナについて

獣医師が執筆しました
長尾 乙磨 先生

獣医師

ねこのうんちを片付けるときに、うんちの色がいつもと違うと感じたことはないでしょうか?明らかにいつもと違って真っ黒いうんちが出ている、そんな時は重篤な疾患が隠れているかもしれません。

黒色便とは 

黒色便とは呼んで字の通り黒い便のことで、「メレナ」とも呼ばれます。メレナの特徴は色と臭いにあります。色はイカ墨のような真っ黒から黒みのとても強い赤で、いわゆる血便でみられる血の赤とは色合いが全く異なります。また臭いも特徴的で、強い鉄臭がします。

メレナは、胃や小腸などの消化管の比較的始まりの方や、稀ではありますが口や鼻で、大量に出血している可能性を示す症状です。大量に出血した血液が胃や腸で消化されることにより、便の色が真っ黒から赤黒くなります。命に関わる重篤な疾患が背景にあることが多いので、すぐに動物病院へ連れて行きましょう [1, 2]。 

原因 

・胃や小腸に発生する腫瘍

胃や小腸の腫瘍の中で最も発生率が高いのはリンパ腫で、本来は体内の免疫を担うはずのリンパ球が腫瘍化して腸の組織の中で異常に増殖してしまう疾患です。リンパ腫以外にも腺癌や、平滑筋肉腫などの腫瘍も考えられます。これらの腫瘍が胃や小腸に発生することで腸組織の構造が破壊されてしまい、大量に出血してしまうことがあります。

・胃や小腸での強い炎症

重度の胃炎や腸炎が発生した場合に、強い炎症によって粘膜がただれてしまい、潰瘍ができてしまうことがあります。潰瘍ができてしまった場合、潰瘍から大量出血してしまうため、メレナが起こります。

・血液の凝固障害

正常なねこさんでは、多少の出血が胃や腸であったとしても血液の中の血を固める成分が正常に働いて血を止めることができます。しかし特にビタミンKの摂取が足りていないねこさんや、血小板の数が少ないねこさんでは、正常に血が固まらない凝固障害が発生して、胃や腸からの出血が止まらず大量に出血してしまう場合があります。

メレナを起こしてしまう原因は、そのほかにも腸への寄生虫の重度寄生や、異物の誤飲、口腔内での潰瘍からの出血、鼻からの出血、鉄剤の投与、鉄分の多い食事の給餌などが考えられます。

診断のために行う検査

・便検査

腸内細菌のバランスが崩れていないかを確認したり、寄生虫の感染が起きていないかを調べる目的で行われます。ただし、うんちの一部のみを用いて検査を行うため、一度の検査で寄生虫が見つからなかった場合にも、寄生虫感染の可能性を完全に除外することはできません。

・血液検査

凝固障害によってメレナが起きていないか確認するために血液検査が行われます。まずは血小板数や、血を固める因子を作る肝臓の項目などの検査を行いますが、必要に応じて血液凝固系に特化した特別な血液検査を行う場合もあります。

・X線検査

おもちゃなどの異物を飲み込んでしまった場合は、X線検査で異物が胃や腸に詰まっているか確認することができます。

・エコー検査

腸や周囲の臓器の断面をエコー画像により確認することができます。腫瘍によって腸の構造が崩れていたり、腸の粘膜に潰瘍ができていたりと診断のヒントになる所見を得られることがあります。

・内視鏡検査

ここまで行われた検査により、腸の組織の評価が必要な場合は内視鏡検査に進むことがあります。内視鏡検査では、喉または肛門から細いカメラを入れて腸の内部を観察します。腸の組織の一部を採材し検査を行なうことで、腸炎や胃炎の原因の特定や、腫瘍の診断を行うことができます。 

注意したい点

・出血により、貧血が起きてしまうことも

胃や腸から大量に出血しているために、気づかないうちに貧血が起きてしまう可能性があります。貧血が起きると、粘膜の色が白くなるという変化が生じます。貧血も動物病院での血液検査ですぐに確認することができます。

・食事変更がないのにうんちの色が黒く変わった場合には注意

鉄剤を摂取した場合や、鉄分の多い食事にした場合には、摂取した鉄分によってうんちが黒くなり、鉄臭がすることがあります。しかし、そういった心あたりがないのに、うんちが黒くなり鉄臭がする場合は重篤な疾患によってメレナが引き起こされている可能性があります。すぐに動物病院を受診することをお勧めします。

参考文献:

1. 獣医内科学, 小動物編, 日本内科学アカデミー編, 文英堂出版

2. SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE 5th edition, interzoo

 

執筆者

長尾 乙磨 先生(獣医師)

山形県出身。東京大学を卒業後、同大学博士課程に在籍中。大学附属動物医療センターで診療活動を行っており、専門は消化器内科。学生時代からアメリカンフットボールをやっていることもあり、いぬねこの筋肉や脂肪、栄養学を専門として研究に奮闘中。