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ねこの多発性嚢胞腎

獣医師が執筆しました
中村 暢宏 先生

獣医師・獣医学博士

博士研究員(酪農学園大学・早稲田大学・国立感染症研究所)

多発性嚢胞腎とは

多発性嚢胞(のうほう) 腎は腎臓に嚢胞 (水が溜まった袋状の構造のこと) がたくさんできてしまう病気です。また、腎臓の他に一部では肝臓や膵臓にも嚢胞を作ることがあります [1]。嚢胞がたくさんできてしまうことで、本来の腎臓の機能が低下してしまいます。

原因

この疾患はPKD1と呼ばれる遺伝子の変異によって起こることが知られている、遺伝病です。特にペルシャという品種の約40%がこの疾患に罹患しているとされ、日本で調査した際も実に46%のペルシャで多発性嚢胞腎が確認されました [1, 2]。また、ペルシャ以外ではアメリカンショートヘアとその類縁種などでも認められることがあります。しかしながら全ての多発性嚢胞腎がPKD1遺伝子の変異によって起こるわけではないため、遺伝子変異がない場合も多発性嚢胞腎の発症リスクがゼロであるとは言い切ることができません。

症状

徐々に嚢胞の数が増え、大きさも増大していくことで腎臓が圧迫され、腎臓の機能が低下していきます。症状としてはねこで多い慢性腎臓病と類似した症状で、多飲多尿(水をたくさん飲み、尿量が増える)や食欲不振、嘔吐、脱水などが見られることが多いです。

病気の進行は非常にゆっくりで、症状が出る平均年齢は約7歳頃とされています。しかし、3歳頃から症状が現れるケースもあります。

治療

残念ながら、現在の獣医療ではこの病気を完全に治すことができる治療法はありません。また、病気の進行を遅らせる方法も、ねこでは確立されていないのが現状です。そのため、病気によって症状が現れた際に、その症状を緩和する治療がメインになってきます。

家庭では日頃から飲水量が増えるように水皿を増やしたり、今までドライフードだった場合はウェットフードに変更したりすると、多尿が原因で脱水症状が生じることをある程度防ぐことができるでしょう。

さらに病気が進行すると顕著に脱水症状などが現れ、体の老廃物を腎臓から上手く排泄できなくなるようになり、尿毒症と呼ばれる状態となる危険性があります。このような場合では皮下点滴や静脈内点滴をすることで脱水の改善や尿毒症症状を軽減させることができます。ただし、過剰な皮下点滴などはむしろ嚢胞の拡大を進行させる恐れがあることから、点滴のペースは獣医師とよく相談するようにしましょう。

多発性嚢胞腎は遺伝病であり、残念ながら有効な予防法も治療法もない病気です。しかしながら早期に病気を発見することができれば、定期的に病気の進行の程度を評価することができ、症状にもいち早く気付くことができ、その症状を早く緩和することができます。そのため、特に好発品種のねこを飼っている場合には動物病院で定期的に検査を受けることをおすすめします。

 

参考文献:
1. Schirrer L, Marín-García PJ, Llobat L. Feline Polycystic Kidney Disease: An Update. Vet Sci. 2021.
2. Sato R, Uchida N, Kawana Y, Tozuka M, Kobayashi S, Hanyu N, Konno Y, Iguchi A, Yamasaki Y, Kuramochi K, Yamasaki M. Epidemiological evaluation of cats associated with feline polycystic kidney disease caused by the feline PKD1 genetic mutation in Japan. J Vet Med Sci. 2019.
3. 猫の治療ガイド2020, 辻本元、小山秀一、大草潔、中村篤史、2020年

執筆者

中村 暢宏 先生 (獣医師・獣医学博士)

北海道出身。北海道の酪農学園大学を卒業後、都内動物病院にて臨床獣医師として勤務。その後、抗生剤の効かない薬剤耐性菌に対する治療法の研究を行うため、酪農学園大学大学院博士課程に進学。2022年3月に博士号を取得後、酪農学園大学・早稲田大学・国立感染症研究所にてポスドクとして研究を行いながら臨床にも携わっている。専門・得意分野は感染症、消化器、免疫疾患など。無類の猫好き。