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糖尿病の食餌について

獣医師が執筆しました
長尾 乙磨 先生

獣医師

糖尿病と食餌管理

ねこの糖尿病は人の2型糖尿病と類似しており、膵臓から分泌されたインスリンが効きにくい状態が体内で起きてしまう疾患です。その原因は肥満や内分泌疾患などが考えられますが、詳しくは「ねこの糖尿病」の項目をご覧ください [1]。

食餌管理の目的は大きく2つあります [2,3]。

食事による血糖値の上昇を管理

食餌を急激に摂取することにより、血糖値が急上昇してしまいます。血糖値の管理のためには食餌の量やタイミングとインスリンの投与間隔を合わせることが必要です。

体重のコントロール

肥満は、ねこの糖尿病の原因の一つです。タンパク質、炭水化物、脂質などの栄養素のバランスや、食餌のカロリーをコントロールすることで、減量をすることが必要です。

食餌のタイミング

食餌のタイミングとインスリンの投与のタイミングがずれてしまうと、インスリンの投与によって血糖値が異常に下がってしまったり、食餌によって上昇した血糖値が下がらなかったりと、インスリン投与の効果が出にくくなってしまいます [1]。

食餌のタイミングはインスリンの投与回数によって変わってきます [2,3]。

1日2回投与するタイプのインスリンの場合

必要なカロリー摂取量の半分ずつをインスリン投与のタイミングで与えることが推奨されています。

1日1回投与するタイプのインスリンの場合

必要なカロリー摂取量の半分をインスリン投与のタイミングで与えて、残りの半分はインスリン投与から8~10時間後に与えることが推奨されています。

 使うインスリン製剤の種類は動物病院によって異なるので、インスリン製剤を処方された際に食餌のタイミングについても相談することをお勧めします。

 

食餌の成分

低炭水化物/高タンパク食

糖尿病のねこの食餌管理として、最も重視されるのは炭水化物の量です。ねこは特に肝臓での血糖値を調整する酵素の活性が低いので炭水化物を大量に摂取すると食後の高血糖が起こりやすいため、炭水化物の摂取制限は必須です。炭水化物の制限によって不足するカロリーはタンパク質を増量することによって解消できます。市販のフードの中ではドライフードよりもウェットフード(缶詰)の方が炭水化物含有量を抑えることができます [1,2,3]。

高繊維食

特に肥満のねこさんや、低炭水化物のフードをあまり食べてくれないねこさんには高タンパク/中程度炭水化物/高繊維のフードを勧められることもあります。食餌に含まれる繊維質が腸での炭水化物の吸収を抑制するため血糖値が上がりにくく、繊維質が満腹感を与えるため減量につなげることができます [1]。

 

食餌管理する上での注意

療法食を利用される際は動物病院でご相談を

さまざまな企業が糖尿病用の療法食を販売していますが、病態に合わない療法食を与えてしまった場合に、必要な栄養素が摂取できなくなり病気が悪化する可能性や、別の病気の発症を引き起こす可能性もあります。まずはどの療法食を試すべきか動物病院で相談しましょう。

併発疾患が重い場合には併発疾患の食餌療法を優先すべき時も

ねこさんの糖尿病の食餌管理で最も困るのは、慢性腎臓病を併発している場合だと思います。腎臓のケアを考えるとタンパク質は制限したいけど、糖尿病のケアを考えると高タンパク食で管理したい。併発している疾患と糖尿病の重症度を比較して考えるべきですが、併発疾患が重篤な場合はその食事療法を優先するケースもあります。

肥満が原因だからといって過度な減量にも注意

肥満のねこさんの減量で最も恐ろしいのは、過度な減量による「肝リピドーシス」です。肝リピドーシスは、過度な減量によるカロリーの不足を補うために体内の脂肪を分解することによって、脂肪が肝臓に溜まってしまい重度の肝障害を引き起こす疾患です。ねこの減量の目安は一週間あたり体重の0.5~1%と言われていますので、こまめに体重を計測して減量を行うようにしましょう [2]。

食餌管理で最も大切なことは、ねこが食べてくれることです。さまざまな糖尿病用療法食がありますが、どの食餌がそのねこさんに合うかどうかは食べさせてみないとわかりません。まずはそのねこさんに合った食事を根気強く探してみましょう。

  

参考文献:

1. SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE. 5th edition. Interzoo

2. Feline comorbidities: Pathophysiology and management of the obese diabetic cat. Melissa Clark, Margarethe Hoenig. Journal of Feline Medicine and Surgery. 2021.

3. 2018 AAHA Diabetes Management Guidelines for Dogs and Cats. Ellen Behrend, Amy Holford, Patty Lathan, Renee Rucinsky, Rhonda Schulman. J Am Anim Hosp Assoc. 2018.

 

 

執筆者

長尾 乙磨 先生(獣医師)

山形県出身。東京大学を卒業後、同大学博士課程に在籍中。大学附属動物医療センターで診療活動を行っており、専門は消化器内科。学生時代からアメリカンフットボールをやっていることもあり、いぬねこの筋肉や脂肪、栄養学を専門として研究に奮闘中。