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ねこの下痢

獣医師が執筆しました
長尾 乙磨 先生

獣医師

下痢をしているときのチェックポイント

ねこが急に下痢をしてしまったり、軟便が続くようなときは心配ですよね。うんちの様子や症状から、異常が起こっている部位を特定するヒントが得られることがあります。まずは、以下のポイントをチェックしてみましょう [1]。

 

下痢の回数・一回に出る量

小腸が原因で起きる下痢の場合は、下痢の回数はそれほど多くなく(1日に2~3回程度)、一回にまとめてたくさんの量が出る傾向があります。一方、大腸が原因の下痢の場合は、少量の下痢を何度もしたり(1日に3~5回程度)、排便姿勢をとってしぶるといった様子が見られることが多いです。

下痢の性状

下痢の硬さや様子から、下痢の重症度を判断することができます。イラストを参考に下痢の性状を見比べてみてください。便のゆるさから、軟便、泥状便、水様性下痢の大きく3つに分けられます。特に水様性下痢が出ている場合は重症の可能性が高いので、なるべく早く動物病院を受診しましょう。

色・臭い

小腸が原因の下痢の場合は、消化吸収不良によって酸っぱい臭いがする黄土色の下痢が見られることがあります。一方、大腸が原因の下痢のばあいは、ゼリー状の粘膜のようなものが付着していたり、血便がみられることがよくあります。またイカ墨のような真っ黒い下痢(メレナ)が見られた場合は小腸や胃で出血を起こしている可能性があるため、すぐに動物病院を受診しましょう。

動物病院を受診の際には、実際に便を持参したり写真に撮って見せられるように準備しておくと説明がしやすいですね。

 

原因

下痢の発生する原因は様々ですが、まずは、数日以内に始まった急性の下痢なのか、それとも長く続いている慢性の下痢なのかを分類して考えます [2]。

<急性の下痢>

食餌の影響

キャットフードを急に変更した場合には、お腹に合わず下痢をしてしまうことがあります。背景に食餌アレルギーが隠れている場合もあれば、脂質やタンパク質のバランスが合っていないケースもあります。稀ではありますが、拾い食いや古くなったフードによる食あたりも考えられます。

寄生虫の感染

ジアルジアやコクシジウムの様な原虫や、回虫や条虫などの蠕虫の寄生によって下痢をしてしまいます。

細菌・ウイルスの感染

猫白血病ウイルス(FeLV)猫免疫不全ウイルス(FIV)、猫パルボウイルスなどのウイルスや、サルモネラやクロストリジウムなどの細菌の感染によって下痢をしてしまいます。猫パルボウイルス感染症は非常に激しい下痢を起こし、子猫が感染した場合は致死率が高いので、特に注意が必要です。

ストレス

ストレスや緊張によって急性に下痢をしてしまう場合があります(過敏性腸症候群)。

そのほか、急性膵炎などお腹の中の炎症に伴って下痢がでることもあります。

 

<慢性の下痢>

慢性腸炎

慢性腸炎とは、様々な原因により腸の炎症が生じる病気です。原因は詳しく分かっていませんが、遺伝的な問題や、腸内環境の問題と言われています。

内分泌疾患

甲状腺からのホルモン分泌が低下する甲状腺機能低下症や、副腎からのホルモン分泌が低下する副腎皮質機能低下症などの病気では、代謝の変化がきっかけで下痢が起きることがあります。甲状腺機能亢進症は高齢のねこで多い病気ですが、副腎皮質機能低下症は稀な病気です。

消化管腫瘍

消化管に多い腫瘍には、本来は体内の免疫を担うはずのリンパ球が腫瘍化して腸の組織の中で異常に増殖してしまうリンパ腫や、腸の細胞が腫瘍化した腺癌、平滑筋肉腫などの腫瘍が考えられます。

膵外分泌不全

膵臓から分泌されるはずの消化酵素が何らかの原因で分泌されていないため、消化不良が発生し下痢が起こってしまう病気です。猫では比較的稀な疾患です。

 

検査

下痢の原因を特定するためには、どのような検査が必要なのでしょうか。

便検査

腸内細菌のバランスが崩れていないかを確認したり、寄生虫の感染が起きていないかどうかを調べる目的で行われます。ただし、うんちの一部のみを用いて検査を行うため、一度の検査で寄生虫が見つからなかった場合にも、寄生虫感染の可能性を完全に除外することはできません。

血液検査

血液検査によって甲状腺ホルモンや、副腎皮質ホルモンを計測することで、内分泌疾患の診断を行えます。また、血中トリプシン様免疫活性の測定により、膵外分泌不全が診断できます。

ウイルス検査

ウイルス抗原を検出するキットを使うことにより、ウイルスの感染を検出することができます。

エコー検査

腸や周囲の臓器の断面画像を評価することができます。腸の構造が崩れていたり、大きな腫瘤を作っていたりと診断のヒントになる所見を得られることがあります。

内視鏡検査

喉または肛門から細いカメラを入れて腸の内部を観察します。腸の組織の一部を採材し検査を行なうことで、慢性腸炎の診断を行うことができます。

 

治療

基本的には下痢が起こっている原因の疾患を特定して、その疾患に対する治療を行います。各疾患の詳しい治療法については、疾患ごとの記事がございますので、ぜひご参照ください。

急性の下痢で重篤な原因がない場合には、二、三日で下痢がおさまってしまうことも多く、点滴や吐き気止め、下痢止めの内服などの対症療法で経過観察を行なう場合も多いです。

 

下痢があるときの注意点

下痢が出ているときには、自宅では次の2点に注意してあげるとよいでしょう。

水分は取れているか

ひどい下痢をしている場合、水分の喪失により脱水状態になってしまうことがあります。下痢で失った分を補える水分量を取れているかどうか、確認してあげましょう。脱水がある場合には、病院での点滴治療が必要になる場合もあります。

食欲・体重の減少はあるか

下痢に加えて、食欲や体重の減少が生じているときには、大きな病気がかくれている可能性があります。長い間食欲が落ちることにより体重が低下し体力が落ちてしまい、免疫力の低下を引き起こします。

 

参考文献:

1. 獣医内科学 小動物編 日本内科学アカデミー編 文英堂出版

2. SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE. 5th edition. interzoo

執筆者

長尾 乙磨 先生(獣医師)

山形県出身。東京大学を卒業後、同大学博士課程に在籍中。大学附属動物医療センターで診療活動を行っており、専門は消化器内科。学生時代からアメリカンフットボールをやっていることもあり、いぬねこの筋肉や脂肪、栄養学を専門として研究に奮闘中。