ねこの血液型は人と同じ?

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工藤 綾乃 先生 獣医師
目次

ねこの血液型の種類

ねこの血液型には、A型、B型、AB型の3種類があります [1]。各血液型の割合は国やねこの種類によって若干変わりますが、基本的にはA型が一番多く(70-90%)、B型は少なく(10-30%)、AB型は極めて稀(数%未満)です。ちなみに、ねこの血液型(A、B、AB)と人の血液型(A、B、O、AB)は、同じアルファベットを使用しているだけで全く別のものです。

血液型の調べ方

ねこの血液型は、動物病院で調べてもらうことができます。簡易検査キットを使用すると、少量の採血で簡単に調べられるので(結果が出るまで数分~数十分)、健康診断や予防接種のときに合わせて血液型の検査をしてもらうと良いでしょう。また、必要に応じてより詳しい血液の型の検査を行う場合もあります。

血液型を知る意味

自分のねこの血液型を知っておくことはとても重要です。それぞれの血液型間で相性が異なるため、緊急で輸血が必要になったときや出産後の授乳のときに問題となってしまうことがあるからです。

それでは、血液型の相性はどのように決まるのでしょうか?

血液型は、赤血球の表面にある抗原の種類によってわけられています。抗原とは、「じぶん」と「じぶん以外=異物」を区別するための目印のことです。動物は通常、自分と同じ目印が付いたものは攻撃しません。それ以外の印が付いたもの、例えば病原体のような異物が体内に入ってくると、抗体などを使って攻撃し、体内から排除しようとする働きが生じます。

A 型のねこはA型抗原を持ち、B型抗原を攻撃する抗体を持っています。B型のねこはその逆で、B 型抗原と、A型抗原に対する抗体を持っています。つまり、B型のねこの体内にA型抗原を持った赤血球が入ってくると、その赤血球はB型のねこが持つ抗体によって攻撃されてしまいます(拒絶反応)。

 

少し複雑になりますが、一般的に、A 型のねこが持つB型抗原に対する抗体の量は少なく、逆にB型のねこが持つA 型抗体の量は多いことがわかっています。このことで、A型のねこの体内にB型抗原が入ってきたときにおこる拒絶反応は比較的弱い一方、B型のねこの体内にA型抗原が入ってきたときに起こる拒絶反応はより強く、致死的になることがあります [1]。

 

拒絶反応が原因で生じる症状

拒絶反応によっておきる症状として、代表的なものを見ていきましょう。

①不適合輸血

大量に出血した場合や、何らかの病気で血液が失われてしまうと、他のねこから輸血をする必要があります。この時に、違う血液型を輸血してしまうと、輸血した血液を体が攻撃し、壊してしまうという副反応が起きることがあります。特に、B 型のねこにA 型の血液を輸血したときには非常に強い拒絶反応が起きる可能性が高いため、輸血前に互いの血液型を知ることが大切です。また、同じ血液型であったとしてもごく稀に拒絶反応が起こることがあるため、輸血の前に血液の相性を調べる必要があります(クロスマッチ試験)。

②新生子溶血

もう一つの問題は、交配・授乳のときにおこります。
B型の雌ねこがA 型の雄ねこと交配して妊娠し、A型の子猫を出産するとします。母乳は母猫の血液から作られるので、B型の母猫の母乳中には、A型抗原を攻撃する抗体が含まれています。この抗体を含む母乳を産まれたばかりのA型の子猫が飲むと、抗体が子猫の赤血球を攻撃、破壊してしまいます。これが「新生子溶血」という病態であり、一旦発症すると亡くなってしまう可能性が高い危険な病態です [1]。

発症を防ぐためには、次のことに気を付けましょう。

◯B型の雌ねこは、B型の雄ねこと交配させる

◯B型の雌ねこから生まれた子猫は体調をよく観察し、場合によっては母乳を飲ませず、代用乳を飲ませる

ちなみに、生まれて48時間以上たつと、子ねこの腸から母乳中の抗体が吸収されなくなるため、母乳を飲んでも新生子溶血の危険はなくなります。

参考文献
1. Feline Internal Medicine Volume 7, Susan E. Little, pp.783-790
2. Transfusion Medicine: An update on Antigens, Antibodies and Serologic Testing in Dogs and Cats. R Zaremba et al. Top Comparison Anim Med. 2019
この記事を監修した人
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工藤 綾乃 先生 獣医師

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。

発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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