災害避難時のねこセット

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工藤 綾乃 先生 獣医師
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近年、日本では大雨やそれに続く土砂崩れや洪水、地震などの自然災害が増加傾向にあります [1]。それに伴い、防災グッズを準備したり、避難経路を確認したりする人は増えているのではないでしょうか。

一方で、ペットの災害対策はどうでしょうか。何を準備しておけばよいのか、避難所はペットを受け入れてくれるのかなど、不明な点も多くあるかと思います。この記事では、ねこと暮らしているご家族の不安を少しでも解消するために、災害が起こったときのために前もって備えておくべきこと、災害時の行動について記載します。

 

災害が起こる前に備えておくべきこと

災害時にすぐに避難できるよう避難所や避難ルートを確認しておくこと、避難所に持っていくべきものをすぐに出せる場所にひとまとめにして置いておくことは、人間の避難と同様に重要です。

加えて、ねこと安全に避難し、安心して避難所で過ごすためには、次のことも備えておくと良いでしょう。

・マイクロチップの装着

被災時にねこがパニックになって脱走してしまうことや、避難所でねこが行方不明になってしまうことも考えられます。マイクロチップを付けていれば、保護されたときに連絡が貰える可能性が高くなります。

・首輪、ハーネス、リードに慣らす

避難時には、ねこが脱走したときのために首輪に名前や住所、連絡先を書いた迷子札を付けておくことが望ましいです。また、ハーネスやリードを付けて脱走を防ぐことも重要です。首輪やハーネスなどに慣れていないと、ねこ嫌がったりストレスを感じたりしてしまうので、普段から付ける練習をして慣らしておきましょう。

・キャリーバックに入る練習

避難所ではキャリーバックかケージに入って過ごします。慣れていないとねこがキャリーバックやケージに入るのを嫌がったり、キャリーバックの中にいることがストレスになったりすることがあるので、普段からキャリーバックやケージに入る練習をしておきましょう。

・不妊去勢手術

雄ねこのスプレー行為や喧嘩、雌ねこの発情期の鳴き声などは他のねこや避難者とのトラブルにつながることもあります。また、望まない妊娠や病気を防ぐためにも重要です。

・予防接種、寄生虫予防

避難所では他のペットとの距離が近く、思わぬ感染症に感染してしまう危険があります。また、寄生虫予防やワクチン接種をしていないと、避難所に一緒に入れないこともあります。

 

災害時の行動

環境省では、災害時に自宅を離れるときは、ねこと一緒に避難する「同行避難」を推奨しています [2]。そのため、基本的には避難所にねこを連れていくことができますが、行政指定の避難所以外ではペットの受け入れを断られるケースもあります。そのため、事前に近くの避難所のペット受け入れの可否について確認しておきましょう。

避難時、ねこを連れていると人間だけの移動よりも時間がかかることを考慮し、自分とねこの命を守るため、早めの避難を心がけましょう。

 

避難のために準備しておきたいもの

避難場所に持っていくものをリストアップしました。普段からすぐに持ち出せるところに置いておきましょう。

・キャリーバック

脱走の恐れがあるため、ねこは必ずキャリーバックに入れて移動しましょう。また、避難所では他のペットもいるので、ねこがストレスをできるだけ感じないよう、使い慣れたタオルをキャリーバックにかけてあげるなどすると良いでしょう。

・ハーネス、リード

ねこの飛び出しを防ぐため、ハーネスとリードをつけておくと安心です。

・フード、水、食器類

災害が発生した後に届く救援物資は人間のものが優先され、ペットへの救援物資が届くのには時間がかかる可能性があります。また、救援物資のフードをねこが食べないという事もあります [2]。普段食べているフードを1週間分×頭数分用意しておくと好ましいです。水も500 mLを3本ほど準備しておきましょう。

・薬、療法食

普段飲んでいる薬があれば、多めに保管しておくようにしましょう。また、療法食は普通のフードよりも入手が困難である場合が多いので、避難用に準備しておきましょう。

・トイレ容器、猫砂

持ち運びが簡単な、ポータブルトイレがあると便利です。また、使用済みの猫砂を少し混ぜてあげると、知らない環境でもねこが安心してトイレをすることができます。 

他にも、もし余裕があれば、おやつ、タオル、ブラシ、洗濯ネット(保護用)、おもちゃ、新聞紙などもあると便利です。また、除菌シートや排泄物を入れる袋などは、ねこのためだけでなく人でも何かと使う機会が多いものなので準備しておくと良いでしょう。

人間の避難がないがしろになってしまってはねこを守ってあげることができず、元も子もありません。まずは自分の命を守ることを最優先とし、そのうえでねことともに安全に避難し、避難所で安心して生活できるよう、健康面やしつけを含めて平常時から備えておくことが最も有効な災害対策となります。

 

参考文献
1. 中小企業白書 第2章 防災・減災対策 中小企業庁
2. 環境省. ペットの災害対策「動物の愛護と適切な管理」、参照日:2022/1/3  
この記事を監修した人
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工藤 綾乃 先生 獣医師

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。

発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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