ねこの便秘・排便困難

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田中 由衣子 先生 獣医師
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動物病院で診察させていただいていると、トイレトラブルをもったねこちゃんによく遭遇します。その中でも排便困難はよく出会う症状のひとつです。

排便困難というと軽い問題、一時的な問題ととらえてしまうこともありますが、実際は放っておけない症状です。

 

ねこがトイレで踏ん張っているとき

まず、ねこちゃんの健康を守るコツとして、トイレでの行動をしっかりと観察してみましょう。常日頃から観察することで、早く異常に気づけることがあります。

例えば、トイレで何度も、あるいは長時間しゃがみこんでいるときには、なにかしらの病気が隠れている可能性があります。その際まずは、便を出しづらいのか、それとも尿を出しづらいのかを判断する必要があります。ねこちゃんのトイレでの様子や排泄物をしっかり観察して、診察時に伝えられるようにしましょう。

排便がスムーズに行えずにトイレで何度も長時間しゃがみこんでいるとき、うんちがうまく出せない状態が生じている可能性があります。この状態が続くと食欲がなくなったり吐いたりしまうこともあるので、いつもと違う様子があるときには早めに対処してあげましょう。また、便に血がついているかどうかも診察のヒントになりますので、よく観察し、可能であれば写真などで記録を残してください。

 

原因

排便困難の原因は意外と多様です。便自体の性状だけでなく、ねこちゃんの腸をはじめ身体のコンディション、また生活環境に問題があるときがあります。

便がかたい

水分量の減少や毛などの混入

腸の動きに異常がある

脊髄の麻痺や特発性巨大結腸症、電解質異常など

結直腸のなかに便の通過を妨げるものがある

腫瘤や異物

結直腸を外側から邪魔するものがある

事故による骨盤骨折やその後遺症、腫瘤など

結直腸の位置がおかしい

会陰へルニアや鎖肛(肛門周囲の形成異常、若齢の段階で問題になることが多い)

排便時の痛み

肛門腺の感染・破裂などおしり周りの病気や後ろ脚のケガなど

ストレス

飼育環境やトイレの変化

 

軽いものであれば、単純に水分の摂取不足で便が固まってしまい便が出づらいということもあり得ます。ところが、よく遭遇するのは腎臓病などによる水分不足や事故による骨盤狭窄、環境変化によるストレスなどであり、厄介な問題をはらんでいることも多いのです。

 

診断のために行う検査

排便困難が生じる原因は様々であり、検査も多岐にわたります。

念入りな腹部の触診や直腸検査(肛門から指をいれて直腸の異常を調べる検査)のほか、X線検査や便検査、血液検査などを行うことがあります。場合によっては下部内視鏡検査やCT検査が必要になります。

 

治療

原因となる病気がはっきりしている場合、その病気の治療にまず取り組みます。点滴や手術が必要になることがあります。便秘を解消してあげるためには、摘便・浣腸・点滴などを行います。浣腸の際は便の軟化剤などを肛門から注入し、便を柔らかくして排泄をサポートします。実際にはかなり根気のいる処置であり、またねこちゃん自身への負担も大きいので、鎮静をかけることもあります。また便の状態を良好に保つため、繊維質の多いものなどにフードを変更したり便軟化剤の投薬をしたりすることがあります。

 

ご自宅での注意点

排便困難自体、またその治療は、ねこちゃんに負担がかかるものです。そのため排便がスムーズに行えるような、良い状態をキープしていくことがとても大切です。病院での指示通りにお食事や投薬、おしり周りのケアをしっかり続けましょう。また、ねこちゃんはとてもデリケートなことも多く、安心して排泄できる環境が大切です。リビングなど人が多く出入りする場所や大きな音のする洗濯機の横、玄関などの寒い場所は、トイレとしては不適切な可能性があります。トイレの形状や猫砂の種類も様々なものが販売されていますが、好みはそれぞれ違うようです。もちろん、排泄後はできるだけ早くに掃除してあげ、清潔に保つことは必須です。この機会にトイレ環境を見直し、ねこちゃんが安心してつかえるトイレを整えてあげましょう。

参考文献
1. 獣医内科学. 辻本元他. 2005.

2. 猫の診療指針Part2. 石田卓夫.2018.
この記事を監修した人
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田中 由衣子 先生 獣医師

東京都出身。幼少期から動物が好きで、いろいろな生きものを追いかけて育つ。卒業後は腫瘍研究をしながら、小動物臨床に携わってきた。数年前から研修もはじめ、ねこちゃんとそのご家族に最適な治療を提供すべく、日々勉強に追われている。

発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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