おうちがボロボロ?爪とぎ対策

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工藤 綾乃 先生 獣医師
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ねこの爪の役割

ねこの爪は自由に出し入れできるという特徴があり、ねこにとって様々な目的で使うことができる重要な道具です。何かをひっかくだけでなく、木などに登る、獲物に襲い掛かる、方向転換する、バランスをとる、身を守る、というときなどに爪は役に立ちます。

 

ねこが爪とぎする意味

ねこが家具などで爪をとぐのは、悪気があるからではありません。爪とぎはねこの定期的な自己メンテナンスの一つであり、自分を守るための爪を鋭く保つための自然な行動なのです。また、爪をとぐ動作は、ねこの背中や肩の筋肉をストレッチするのにも役立ちます。

他にも、ねこの肉球の間には臭腺という匂いを出す器官があるため、爪をとぐことで自分の匂いを付けたり、また物理的に爪痕を付けたりすることでマーキングをするという意味もあります。

 

家具や壁紙での爪とぎ対策

ねこにあった爪とぎの準備

少なくとも一つは、ねこが全身をのばして爪をとぐことができるくらい縦に長い爪とぎを準備すると良いです。ねこによって好む素材や触り心地が異なります。段ボールか、木材か、ねこが好む爪とぎ板を見つけてあげましょう。

壁の保護シート、柑橘系の香りのスプレー

ねこに爪をとがれたくないところには、保護シートを貼っておきましょう。また、個体差はありますが、ねこは柑橘系の香りを嫌がることが多いので、ソファなどにスプレーをかけるのも爪とぎを防ぐ一つの手段です。

しつけ

爪とぎで爪をといだら誉め、家具などで爪をといだら叱る、ということを「一貫性をもって」おこないましょう。叱るときは、ねこが行動を行っている最中にすることも大切です。数分でも時間が空いてしまうと、ねこはなぜ叱られているのか理解できません。また、叱るときに体罰は絶対に避けましょう。ねこが人間を怖がるようになってしまいます。家具で爪をといでいるのを発見したらすぐに大きな音をだしたり、霧吹きで軽く水を吹きかけたりすると良いでしょう。

ネイルキャップ

日本ではあまり知られていませんが、アメリカなどでは一般的なねこの爪とぎ対策のひとつとして使われています。やわらかいねこの爪の形をしたゴムを爪に装着することで、壁などに傷がつくのを防ぐことができます。一定期間で自然にとれるので、その間に爪とぎを設置したり、しつけを行ったりすると良いでしょう。ただ、ねこによってはネイルキャップを付けた爪先に違和感を感じてストレスとなることもあるということも理解しておきましょう。

こまめな爪切り

爪切りをしても爪をとぐことはやめさせられませんが、もしひっかかれてもケガをするリスクを減らすことができます。

人や家具を傷つけるのを防ぐ目的で爪を手術で切除する(爪が生えてこないようにする)という方法もあるにはありますが、ねこにとって何のメリットも無いだけでなく、術中だけでなく術後にも痛みが続いたり、術後のねこが術前と比べてより攻撃的になるなど、問題行動が増えることがあるという報告があります [1, 2]。これはねこにとって手術自体がストレスであるのに加え、爪が無くなってしまうことでねこが自然な行動ができなくなるという点で大きなストレスであることを示しています。現在ではオーストラリアやニュージーランド、ブラジルのほか、多くのヨーロッパの国々でこの処置は禁止されています [1]。

爪とぎはねこの習性の一つと考え、上手に付き合っていきたいですね。

参考文献
1. Comparison of 3 methods of onychectomy. K. Clark, et al. Can Vet J. 2014.
2. Feline Onychectomy: Current practices and perceptions of veterinarians in Ontario, Canada. L.R. Kogan, et al. Can Vet J. 2016.
この記事を監修した人
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工藤 綾乃 先生 獣医師

札幌出身。地元の北海道大学を卒業後、関東の動物病院で勤務。腫瘍症例の治療に携わるなかで、より効果的な治療を見つけたいと考え、現在は麻布大学博士課程に在籍中。ねこと暮らしながら実験漬の日々を送っている。専門や興味のある分野は、がん、麻酔・集中治療、野生動物臨床など。

発行・編集:株式会社トレッタキャッツ

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